宇宙飛行士は無重力空間での生活において上下左右の他に重力のある空間ではなかなか把握できない第三の方向感覚が生まれるらしいです。つまり上下という感覚は重力のある天と地という完全な決まりの中で生まれた概念であって無重力空間では上とか下とかいっても、なかなか通じないわけです。現にスペースシャトルは宇宙空間ではかなりおかしな飛び方をしていて、地球に対して垂直になっていたり逆さになっていたりと空気抵抗がないのでどういう方向性はどうでもいいわけです。先がとがっている方が前で...という観念は空気抵抗のある空間でのみの観念であって空気抵抗のない空間ではどんな位置であれ同じスピードで飛ぶことができるわけです。(まして、飛ぶ...なんていう言葉も空気抵抗と重力のある場所での観念で宇宙空間にあるものは全部飛んでいるので「飛ぶ」という言葉もちょっとおかしいかもしれないです。)
しかし、私自身は方向感覚はたしかであまり道に迷ったりしない方ですが、左右はよく間違えるのです。これも生まれ持った何かなのかもしれないのですが、左右という概念に対してはかなり適当です。以前に左側のお腹を手術したことがあってその際に左側の腹部がしばらくの間つっぱった感じでかなり不自由だったので左という概念を覚えました。「このつっぱっている方が左である」という認識に至ったわけです。しかし次の年に同じ病気が右側の腹部に発生し手術の結果左右の腹部が同じようにつぱった感じになってしまった時に私の左右の区別は完全に失われてしまいました。
そんなわけで現在に至るまで左右をよく間違えてしまうのです。
この左右を間違ってしまう感覚は先の方向感覚と同様にわからない人にはわからない「クオリア」というものなのでしょうけど、人間やその他の生物もたいていの場合左右対称です。要するに右も左も全く同じ形をしているので形という特徴からすると左右の区別はつけづらいことになります。そんなわけで、左右の区別というものは形そのものにあるわけではなくむしろその感覚的な抽象概念なわけです。勿論箸を持つのは右です...とか、そういった具体的な概念も存在するわけですが、もし仮にそういった日本のしきたりがなく左で自由に箸を使えるようになった際ににはそういった具体論は役にたたなくなります。役にたたなくなってもたぶんそういう世界でさえも左右という概念はあり続けるという意味では非常に抽象度の高い概念と言えるハズです。
私自身のこの左右に対する混乱は私自身が両利きなのではないかという予想からはじまりましたが、たぶん間違いなく私は両利きです。無意識に左手で箸をもって食事をしている時があるし、腕の組み方もひとつの方向だけではなく左が上でも右が上でも違和感がないのです。ボクシングをやっている友人が冗談でシャドーボクシングをはじめたので、私も構えてファイティングポーズをとり対抗してみましたが、「サウスポーはやりづらいな...。」と彼。逆に通常の左でジャブ、右でストレートというスタイルで構えてみてもさほど違和感がない。スノーボードはいわゆるグーフィー。(レギュラーでも大丈夫。)野球のバッティングはスイッチヒッタースタイルですが、ボールを投げるのは左ではできません。たぶんグローブを常に左につけていたのでもうこの年になったらきちんと右でボールを投げるようになってしまったのだと思います。しかしあわゆる局面で左右の区別がどうでもいいということになっています。
にもかかわらず、実際に左右の区別ができていないので、日常的には非常に馬鹿に見える。「次の角を左に曲がってください。」といわれると「わかりました。」といいながら右に曲がって行ったり、「ちょっとその右側にある◯◯を取ってちょうだい。」といわれると逆を見ていたり、「あの写真の左にいた人だよ。」といわれると反対側の人を想像していたりと日常的には知能障害に近いものがあるわけです。このことが致命的だったのは、外国に行って英語を話すときにも同様だったことです。LeftとRightの区別が全然ついていない。外人さんにとても優しく「これがLeftでこれがRightだ。わかるか?OSAMU? 」と左右の単語をおしえてもらったことがあります。流石に単語ぐらいはわかるのだけど、日本語でも左右を間違えるのだから英語でも全く同じことなわけです。彼にとってはまだLeftとRightという単語も覚えていないのか!という風に見えたらしいです。左右を間違えるなんて想像に及ばないというわけです。
本日テレビで見たことなのですが、腕を組んでみてください。左腕が上だったら(もしあなたが右利きでも)隠れ左利きなんだそうです。本来右と左は半々で存在しているわけですから、身体的には左利きと右利きが半々でいてもおかしくはない...と思いますし、もっと究極的なことをいうとその利き手ということ自体がおかしな気がしないでもないのです。
ちなみに私の母親は大根おろしをする際にのみ左利きになるそうです。



